招待講演

講師:
宗行 英朗 教授(中央大学 理工学部 物理学科)
題目:
「分子モーター F1-ATPase によるエネルギー変換特性」
日時:
2012年11月26日(月)を予定
概要:
F1-ATPaseはFoF1-ATP合成酵素の一部で,生体内ではFo部分が発生するトルクでF1-ATPaseの回転軸が回され,そのエネルギーでATPを合成する.F1-ATPase単独では,ATPを加水分解することにより回転軸が逆回転する.つまりこの酵素は,ATPの加水分解・合成と回転軸の回転を共役させることにより化学反応から得られる自由エネルギーと回転運動のエネルギーを変換する分子モーターである.本公演では一分子観察・一分子操作技術と非平衡物理学の理論の応用によって明らかになってきたエネルギー変換特性について議論する.
講師:
荒木 武昭 准教授(京都大学理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻)
題目:
「流体粒子ダイナミクス法によるコロイド分散系の研究」
日時:
2012年11月27日(火)を予定
概要:
コロイド分散系は10nmから10μm程度の微粒子が液体に分散した系である。微粒子に比べ液体分子は十分に小さく、また早く運動するため、微粒子の運動に注目するかぎり、多くの場合、個々の液体分子の運動は無視することができる。その際、液体は媒質として考えることができ、その効果は、微粒子に対する流体力学的相互作用と微粒子の熱運動として現れる。
液体媒質として扱うことで、個々の液体分子の運動という極めて大きな自由度を無視することができるが、それでも流体相互作用は長距離に及ぶ多体相互作用であるため、数値的に取り扱うことには多くの困難があり、それを解決すべく、これまで多くの数値シミュレーション法が提案されてきた。
我々も、固体である微粒子を変形せず、また周りよりも高い粘性を持つ液滴とみなすことで、分散系を効率よく扱うことができる数値シミュレーション法を開発し、流体粒子ダイナミクス法と名付けた。この発表では、流体粒子ダイナミクス法の考え方と、荷電コロイド系といったいくつかの系に対する応用例について紹介を行う。
講師:
手老 篤史 准教授(九州大学マス・フォア・インダストリ研究所)
題目:
「単細胞生物に学ぶ最適なネットワーク」
日時:
2012年11月28日(水)を予定
概要:
真正粘菌Physarum polycephalumの変形体は多核単細胞生物でありながら非常に興味深い性質を持っている。その一つが最短経路や最適ネットワークを見つける能力である。粘菌は複数点の餌に接触するとそれらの間を管のような構造をしたもので繋がりながら餌のまわりに集まる。この時の管ネットワークは状況に応じて最短性や断線保障性などを備えた優れたネットワークとなっている。だがしかし変形体はどのようにしてそのような優れたネットワークを求めているのだろうか。今回の講演ではこのような粘菌のネットワークを紹介し、数理モデルで再現することにより最適なネットワーク生成メカニズムについて考察する。