講義内容
河村 原子・分子間相互作用の形式
経験的パラメータの最適化
半経験的パラメータの最適化
モデルポテンシャルの評価(無機・有機複合系のために)
<付録>MPI並列計算による分子動力学法
土屋 第一原理計算による原子間相互作用モデルの導出
電荷変動分子動力学法
森下 第一原理MDの基礎:拡張系からのアプローチ

東京工業大学 河村雄行 教授
原子・分子間相互作用の形式
希ガス分子間相互作用から,イオン結合,共有結合に対応する, 原子・分子間相互作用モデルの形式を議論する. 3体相互作用,シェルモデル,ブリージングモデル等にも言及する. また水の各種モデルを概観する.
経験的パラメータの最適化
結晶構造(格子定数と原子座標),温度−密度,圧力−密度などの状態方程式, 赤外吸収・ラマン散乱などのスペクトル,などの実験データを用いた,相互作用 モデル関数のパラメータの最適化を議論する.
半経験的パラメータの最適化
分子軌道法を用いた,原子・分子間相互作用モデル関数のパラメータの 最適化を議論する.2原子分子を中心にする(固体結晶は土屋による).
モデルポテンシャルの評価 (無機-有機複合系のために)
吸着,固溶体,粘性,誘電率等のさまざまな性質を通して, モデルポテンシャルの正当性と適用限界を検討する.
<付録> MPI並列計算による分子動力学法
多相系,多結晶物質などの,大規模複雑系のMD計算のための 並列計算システムとして,MPI並列のソフトとハードを概観する. プログラミングについても,実例を示し,解説する.
参考文献
「分子間力と表面力(第2版)」,J.N.イスラエルアチヴィリ, 朝倉書店.


東京工業大学 土屋卓久 博士
第一原理計算による原子間相互作用モデルの導出
粒子間の相互作用を簡単な解析関数でモデル化する古典MD法において, 計算結果は用いた関数に全面的に依存する.粒子間相互作用とは? どのようにして高精度モデルを構築すればよいか,等を議論する.
  • 分子シミュレーションにおける粒子間相互作用とは
  • 古典力学から見たボルン・オッペンハイマー面
  • 多体相互作用と汎関数ポテンシャルモデル
電荷変動分子動力学法
イオン系の分子シミュレーションにおいて,本来,結合種,配位環境など の違いに応じて変化すべきイオンの有効電荷の変動を取り込むモデルとして 可変電荷(DFC)MD法がある.このモデルでは,原子間相互作用自体がシミュ レーション中に変動することになる.DFC-MD法の基礎,応用,発展性を紹介する.
  • イオン系の多体ポテンシャル
  • 電気陰性度均等化原理と電荷平衡化法
  • 電荷の動力学(DFC法)
参考文献
「固体 -構造と物性-」,金森順次郎他,岩波書店.
「原子・分子の密度汎関数法」,R.G.パール・W.ヤング,シュプリンガー.


理化学研究所 森下徹也 博士
第一原理MDの基礎:拡張系からのアプローチ
分子動力学法における様々な手法の中で,拡張系に分類される手法は非常に重要な位置を占めている.拡張系の基本骨子は,計算系に含まれる各原子の位置座標とその時間微分(速度)の自由度に加え,新たに仮想的な力学的自由度を加えることにある.Andersenによる圧力制御手法や能勢による温度制御手法は,拡張系の手法の最たるものである.これらの手法における仮想的な力学変数は,体積や時間に関するスケール変換量である.第一原理MDとして知られるCar-Parrinello法もこの拡張系の一種であり,電子の波動関数が新たに加えられた力学変数として扱われる.
講演では,Car-Parrinello法を圧力や温度制御手法との関連から紹介し,いくつかの応用例もまじえて,第一原理MDの有効性を議論する.
参考文献
H. C. Andersen, J. Chem. Phys. vol.72, 2384 (1980). (定圧手法)
S. Nose, J. Chem. Phys. vol.81, 511 (1984). (定温手法)
S. Nose, Prog. Theor. Phys. Suppl. vol.103, 1 (1991). (定温手法の解説)
R. Car and M. Parrinello, Phys. Rev. Lett. vol.55, 2471 (1985). (第一原理MD)
T. Oguchi and T. Sasaki, Prog. Theor. Phys. Suppl. vol.103, 93 (1991). (第一原理MDの解説)
T. Morishita, Phys. Rev. Lett. vol.87, 105701 (2001). (第一原理MDの応用)

 

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